愛着障害に怯えないで
今や子育て中の方で、愛着障害という言葉を知らない方はいないでしょう。
親からすればとても恐ろしく、最も脅威を感じさせる言葉ではないかと思います。
万が一、わが子が愛着障害と診断されたら…と思うと、きっと罪悪感と恐怖で押し潰されそうになるのではないでしょうか。
確かに乳幼児期に形成される愛着は、後の人間関係のベースとなって、生涯ついてまわるものだと言われています。
安定した愛着を作れれば、のちの人間関係も安定したものになりやすいと言われますし、不安定な愛着を作ると、対人関係は不安定なものになりやすいと言われます。
確かにそう。そうなんですが、では不安定な愛着を作ってしまったら、ずっと不安定なままなのかという疑問が残りますよね?
本当にそうでしょうか?
いいえ、私はそうは思いません。
愛着は親との間だけに形成されるものではないし、長い人生の中でいろんな出会いがあり、その中で愛着が補強される機会は山ほどあるからです。
しかも、愛着が補強されれば、心の傷は修復されるだけでなく、それまでの生きづらさが反転して、輝きを伴った強さに変わると感じています。
私の周りのもたくさんいます。
見事に武器に転換させてきた人たちが。
しかも、偉人といわれる主導者たちのほとんどが、まさに愛着の補強に成功した人たちだとご存知でしょうか。
ルソー、エリクソン、ウィニコット、ヘミングウェイ、チャプリン、ビル・クリントン、オバマ、・・・
どの人を例にとっても、心の傷を力に変えてきた人ばかりです。
愛着のカタチは、子どもにはどうすることもできません。
子どもは育つ環境を選べないからです。
だからと言って、親を責め続け、自分のつくられ方を嘆き続けているだけでは、何も生まれません。
それよりも、前進させて、武器に磨き上げるべきです。
他の人には経験できない世界を知ったものとして、武器にして、社会に生かすべきだと思うのです。
私は、乳幼児期の心の土台づくりの大切さについては、どんどん発信していきたいし、言いすぎることはないと思っています。
ただ、だからと言って、手遅れだとか、子育てに失敗した、などと思う必要はないのです。
今からでも大丈夫。
怖がらないで。
勇気を持って、自分のつくられ方を点検してみましょう。
そして、うまくいかないことがあったら、誰かのせいにしないで、「ああ、やり残しがあったんだな」と思って、その不足を埋めればいい。
そんな考え方が当たり前だと思える時代になれたら、どんなに多くの人が楽になるだろうに、と思うのです。
不安定な愛着は勲章です。
勲章なら、ちゃんと磨いて、ピカピカにしてあげてください。
磨き上げた瞬間から、不安定ではなく、どこから見てもどっしりとした、安定感たっぷりのカタチに変換され、多くの人に、勇気と、強さと、憧れをもたらすのだと思うからです。(鶯)